投資期間中にその不動産投資が儲かっているのかどうかを判断するのは難しいことです。毎月・年間のCFを見ればフロー(現金収入)としての儲けはわかりますが、ストック(純資産)としての儲けの算出は難しいです。今日は、私が目安程度に使っている利益ゼロ利回りの考え方を紹介します。そんなに目新しい視点ではないので、皆さん使っているのかもしれませんがご了承ください。
以前の記事で、不動産投資の儲けを考えるうえでの3つの視点を書きました。フロー(現金収入)、ストック(純資産)、投資対効果の3つです。(以前の記事はこちら「不動産収支の3つの視点」)
そこでは、フローだけを見て儲け判断するのはよくなく、実はストック(純資産)を食いつぶしてしまっているだけかもしれない(一部の毎月分配型投資信託のような)ということを書きました。フローは測定可能で定量的に表現できますが、ストックは数値算出が難しいです。なぜなら、ストックとしての価値は、
売却価格(試算) - 借入金 - 売却手数料等(試算)
の計算で算出でき、売却価格という未だ確定していない数字に大きく左右されてしまうためです。
不動産売買というのは相対取引である以上、相場というものがあって無いようなもの。売却価格も匙加減で高くも低くも見積れてしまいます。ただ、これだと「今、ストック視点で儲かっているか否か」という投資家の自問自答に答えられません。
私もいろいろと考えてみたのですが、ひとつの指標として、利益ゼロ利回りという視点を今は使っています。
これは、初期投資額と同額が、売却後に最終的に手元に残るような売却利回り、という意味になります。別の言い方をすれば、投資額を回収できる売却利回りです。先ほどの計算式にすると、
初期投資額 = 売却価格 - 借入金(残債) - 売却手数料
になり、売却手数料を売却価格の3%(税別)とすると、上記の式は
初期投資額 = 売却価格 - 借入金(残債) - (売却価格 x 0.03)
となり、売却価格を計算してみると、
売却価格(利益ゼロ) = (初期投資額 + 借入金(残債))/ 0.97
になります。これを利回りに直すと
利回り(利益ゼロ) = 現在の賃料収入(年間) / 売却価格(利益ゼロ)
となります。この利益ゼロ利回りが現在の市況で売り出すときに高いのか、妥当なのかで大まかに儲かっているかどうか、を判断します。
例えば、保有物件の札幌市物件は、利益ゼロ利回りが14%です。
築30年のRC、札幌駅まで地下鉄で20分未満、最寄駅徒歩10分の物件です。これを今売り出したとしても、おそらく利回り10%前後で勝負できるかと思います。その意味で、今儲かっているんじゃないかな、と判断しています。
利回10%で売却できる、と想定して、売却価格を逆算し、儲けを計算する、という方法もあります。むしろ、そちらの方がシンプルかと思います。ただ、そうすると儲けの金額に目がいってしまい、不要な皮算用が始まってしまいます。売却額を正確に把握すべきは、本当に売却するときでよいです。私が今把握すべきは、フローがストックを目減りさせたものなのか、それとも、フローがありつつストックも増加しているのか、ということです。これさえ分かれば保有期間中は十分だと思っています。
緻密な計算も大事です。私は理系ということもあり、ついつい細かい計算をしたくなります。ただ、今後資産を拡大していくうえでも、経営者視点を身に着けるという意味でも、「細かな数字にとらわれず、いかに大雑把に儲けを把握するか」ということも大事だと思っています。「数字のお遊び」と「どんぶり勘定」の間をバランスよくやっていく必要があるなあ、と。
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